Stack Overflow調査で見るエンジニア年収の世界標準

深夜0時を回っていた。

彼はいつものように、技術記事を読んでいた。
客先のシステム開発で詰まった箇所があって、調べ始めたのが21時。
気づけばとっくに退勤時間を過ぎていた。

SIerに入って5年。客先常駐で要件定義と実装を繰り返す毎日だ。
仕事は普通にこなせている。特に不満があるわけでもない。

ただ、ふとした弾みで手が別のタブを開いた。

「世界のエンジニアってどのくらい稼いでるんだろう。」

転職を考えていたわけじゃない。
純粋な好奇心だった。

Stack Overflow Developer Survey 2024。
185カ国、65,000人以上のエンジニアが回答した大規模調査だ。
英語のページが開く。


数字が目に入ってくる。

米国・バックエンド開発者の年収中央値——$170,000

スクロールする手が止まった。

日本円に直す。1ドル150円として約2,500万円
自分の年収は500万円

5倍だ。

「日本のエンジニアは安い」という話は聞いたことがあった。
でも、「知っている」と「見た」は違う。
数字は画面の中に静かに存在していた。

米国エンジニアリングマネージャーの中央値は$192,500(約2,880万円)。
シニア・エグゼクティブ職は$225,000(約3,375万円)。
全回答者の年収中央値でさえ$60,000〜$75,000(約900〜1,100万円)——日本の平均的なエンジニアより上だ(Stack Overflow Developer Survey 2024)。

さらに調べた。今度はLevels.fyi。外資系テック企業の年収データベースだ。
日本在住のソフトウェアエンジニアに絞ってフィルターをかけた。


中央値:8,530,940円(約853万円)

東京在住に絞ると10,026,599円(約1,003万円)

注意書きが目に入る。
このデータはGoogleやAmazonといった外資系テック企業の報告が多い。
一般的な日本企業の平均ではない。

だとしても、自分と同じ「日本に住むエンジニア」が出している数字だ。

500万円と853万円。同じ日本にいて、1.7倍の開きがある。

もう一度、Stack Overflowの調査ページに戻った。気になった一行があった。

「エンジニアの68%がコーディングを趣味として継続している。」

仕事として書くだけでなく、好きで書いている人たちがこの数字を出している。

そういうことか。

何かを掴みかけた気がした。
でも何かはまだわからない。

コーヒーが冷えていた。飲み干した。

彼はまだ転職を考えていない。
履歴書を書くつもりも、どこかに相談するつもりもない。

ただこの夜、「自分の500万円が世界のどこに位置するのか」を初めてリアルに突きつけられた。

これが普通じゃないとしたら——自分は何を知らずにいたのか。

でも、なぜ同じエンジニアでこんなに差が出るのか。
年収の数字の裏には、何か別の仕組みがあるような気がした。

 

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